日進月歩で開発される真空技術を応用したミクロン単位の成膜技術。 c-BN成膜と並ぶCVD(化学的蒸着法)の旗手として、DLC(ダイヤモンド状カーボン)成膜装置の量産化が秒読み段階に入った。 それを推進するのが若きエンジニアの柏原である。根気強く条件出しの評価テストを繰り返しながら、真空技術の雄・SHINKOにふさわしい画期的な技術開発の成果をまもなく手に入れようとしている。

■DLC成膜装置の量産化に向けたテストを担当 柏原哲隆
 DLC(ダイヤモンド状カーボン)成膜の量産プロジェクトに参加しています。わが社のDLC膜は他社にないなめらかな表面と膜厚を10μmと厚くつくれるという特色をもっており、 平成11年(1999)に第1号機の成約を達成しました。耐磨耗性部品の表面処理に適した装置として、切削工具やピストン、シリンダなどの自動車部品などの摺動部品類への表面成膜の用途が考えられます。CVD(化学気相蒸着装置)によってつくり出されますが、量産化に向けて機器の組み立て、測定、評価を繰り返し行い、条件出しと安定したデータを検出中です。装置内を真空状態にするのに約1時間、成膜に同じく1時間、冷却にも1時間と、テストは根気のいるものです。成膜する物質がベアリングであれシャフトであれ、要望どおりに表面加工ができるかどうか。今、テストは終盤を迎えています。
■先進の開発環境と情報収集力
 大学院では、レーザで薄膜の膜厚や物性を測定する装置をつくり、薄膜評価の研究をしていました。その関係もあり、真空という特殊な環境を生み出す装置が開発できる神港精機に入社したのです。社会人になって気づいたことは、大学院の頃は無制限といえるくらい時間がたっぷりあったけれど、企業では開発スパンがあらかじめ決められており、開発にはスピードが要求されるということ。それに神港精機は、各産業界の生産技術に関する最先端技術の情報収集力がすごいという点です。毎日が発見であり、日常業務を通して刺激を受けます。現在、プロジェクトを主任と2人体制で動かしていますが、開発に関するあらゆる業務に携われるのでとても面白い。モノづくりがしたかったので大変満足しています。
■学べる環境、学びの奨励
 技術主導の会社ですから、理系文系出身を問わず、すべての人材をそれぞれの担当のスペシャリストに育てようという教育方針が気に入っています。どんどん勉強させてもらえる環境を活用して、外部研修に参加したり、応用物理学会に出席させてもらっています。勉強をするほどに真空技術の魅力と奥の深さを実感しています。入社3年目を迎える頃は、大学院に例えるなら修士課程を修了し博士課程に進む段階です。その頃には私も真空技術と薄膜形成のエキスパートとなって、時代のニーズに即した新技術を提案できるエンジニアになっていたい。それが当面の目標です。

トピックス
■画期的なDLC成膜装置に各産業界が注目
 DLC膜とはダイヤモンドのような炭素膜のこと。摩擦係数が小さいという特長をもち、身近なところでは、カミソリ刃やDVDテープの表面に成膜され商品化されている。神港精機がDLC成膜に着手したのは平成6年(1994)。下地との密着力を促す中間層や、RF電源から非対称パルス電源の採用など、ハードおよびソフトの両面から研 究を重ねてきた。そして、独自に開発したプラズマガンを搭載した、熱陰極PIGプラズマCVD装置による実用化へと結実させた。DLC膜が産業装置にいよいよ革命をもたらす。

プロダクト
■DLC成膜装置 DLC成膜装置
 ダイヤモンドのような炭素膜、DLCを成膜するCVD装置。摩擦係数が小さいDLC膜を施すことより切削工具、自動車などの各主部品の摩耗率を下げ、生産性の向上とコスト削減に貢献する。各種金属はもちろん、ゴム素材などの薄膜形成も可能にした。膜厚は1μm〜数μmまでコントロールできる。
■c-BN成膜技術
 c-BN(立方晶窒化ホウ素)膜は、ホウ素(B)と窒素(N)がそれぞれ立方体を形成しながら結晶をつくっており、ダイヤモンドに次ぐ硬さを誇る。従来はCVD法で製作されたc-BN粉体をグラインダやバイトなどの工具類に焼結させていたが、神港精機ではイオン化を促進させてPVD成膜にする技術を確立中。完成すれば世界初となる。

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